ひがぺー

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2023-11-23

正欲 (2023年の映画)

原作は未読です

ものすごいよかったっす

LGBTって単語が流行っているのをあまり良く思っていない勢です。 なぜ代表的なものの頭文字を取ったのでしょうね。 性的マイノリティなんて、4つのカテゴリに収まるわけもありませんのに。 現に、まもなくもう1字増えてLGBTQになりました。 むろんそれでも足りません。 マイノリティの中にも、どうしても多数派と少数派が生まれます。 代表的な頭文字をとって「性的マイノリティ」を表現すると、さらなる少数派がいないものとして扱われないか。 より孤独へ追いやってしまわないか。 例の単語を聞くたびに、そのへんが心配になります

本作も、LGBTQいずれにも属さない人が登場します

僕は嗜好について登場人物ほどの苦しみを味わったことはありませんが、自分は死んでもいい人だって感覚とか、自分の人生を自分のものとして過ごせない感覚とか、そんな人生から降りたくなる感覚とかは、まあ分かる気がします

今の僕が健康に無事に楽しく生きているのは、ひとつには虚淵玄さんというお人の言葉のおかげです。宮台さんとの対談ででしたかね。「本をあと1ページだけめくる」てな表現していたのに面白さと救いを感じました。このごろは「まああと1ページだけ進んでみるかー」で延命しています。 とはいえ、ページをめくるのを止める日が来るかもしれません

普通を求められて、そんな嗜好な人なんているわけもないと言われて、多くの人から見えないところに追いやられて、孤独で。 独りでいるなら人生終わらせてもあまり違いはないんですよね。 劇中もそんなモノローグから始まります

だからこそ、他者と縁ができると、もう少し生きてみるかー状態になれるんですよね。 もちろん、マジョリティだろうがマイノリティだろうが、ひとりで生きられる・生きたい人もいるのは大前提として、です

劇中で2人とも興味のない性行為の真似事をします。 着衣のまま身体を動かす、ほんまもんの真似事です。 このシーン要ります? って思ったのですけど、そのうち大切な言葉を交わし始めるのですよね。 すごいっす。そのとき確かに2人は繋がっていると感じられるシーンです。 「普通」な人がやる肉体的な繋がりを2人で「変なの」と笑い合って、精神的な繋がりのあるカットが入る。この2人がかげがえのないパートナだと確かめられます

終盤の、検事との対面シーンもすごいですね。 この部分だけ切り取っても、マイノリティについての研修として使えそうなくだりです。 明確な決めつけが相手を傷付ける場合があることや、必ずしも自分の嗜好を他者に話せるとは限らないこと、話す気がないのなら尊重すべきであること、あいつの嗜好はこうだよと迂闊に広めるべきではないこと、疎外感とともに生活している人がいるかもしれないと想像すること、など

ポスタのキャッチフレーズは「観る前の自分には戻れない」です。 内容をまったく知らずに映画館に行ったので、どんでん返しありのサスペンスなのかと予想していました。 実際は違っていて、映画館を出たときには観る前よりもエンパシが効くようになる、ということですよね。 観たら、ちょっとだけ他者へ気遣いができるようになっている。 そんな前向きな意味だと受け取っています

性的マイノリティの人たちは、本作を観てどう思うのでしょう。 もし違和感があるなら、きっと僕の意識の外でもあるんですよねー。 どこかで感想やレビューに出会えればよいのですが

演技について。稲垣さんの保守的な父親像、どの作品でもぴったりはまりますよねー。 本作でも、受け入れない姿勢を強固に出してもらうことで、かえって、「このご時世では無理があるよねー」って印象を浮き彫りにさせます

てゆーか新垣さんって女優だったんですね。 ただの小娘かと思ってました。 まじで失礼ですみません。 名優です。 目線の動きや、背筋を伸ばさない姿勢、話し方。 ふと落ちる涙。外に出せない辛さを必死に自分の内部でぐるぐる回す感じ。 どれをとっても「自分の人生だのに、その主役が自分と思えない人」の演技で、感服しました

というわけで良かったです。 原作も読んできます



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